煙草。円柱。恵方巻き。節分。節分といえば、昨年の節分は恋人になる前の恋人と一緒に恵方巻きを作って食べた。ぼくの実家で、ぼくの母親と一緒に。
ぼくは前頭葉が未発達であるせいで衝動に身を任せてしまうことが多々あり、恋人になる前の恋人をなぜ実家に招いたのかは今になっては分からないが、おそらく恋人になる前の恋人が節分に恵方巻きを食べたことがないと言ったので、「じゃあうちに食べに来たら?」と誘ったのだったと思う。以前からぼくの母親の料理が美味いという話をしていたこともあり、恋人になる前の恋人はこの誘いを非常に喜んでいるように見えた。
誘ったからには母親に許可を取らなければならない。ぼくは母親にこう言った。
「以前から話していたKさんが、節分に恵方巻きを食べたことがないみたいだから、うちで一緒に食べませんか?と誘ったんだけど大丈夫?」
母親は変な顔をしたあとに、
「別にええけど。えー、なんなんあんたら。よく一緒に出かけてるし、付き合っとるん?」
と言った。ぼくは答えた。
「付き合ってないよ」
「あらそう。でもあんたはKさんのことが好きなん?」
「好きだよ。これまでに2回告白したけど2回ともふられたよ。今度ふたりきりで4泊5日の台湾旅行するよ」
「は?」
母親は鋭く声を上げるとそのあとは口をただパクパクさせていた。
そして節分当日。の出来事は前に短歌連作にしたので割愛。
節分でしたね。の連作です。 #tanka #短歌 pic.twitter.com/t2OkyFFvmR
— 西村取想 (@N_torso) 2019年2月6日
これが作られたのは2回ふられたあとなのかと思いながら読み返すと、我ながらおもしろい。
ちなみに恋人は節分のことを頑に「おに退治の日」と呼称する。節分に恵方巻きを食べたことはないが、豆まきはしていたらしい。ある年、鬼の役をやってみたくなり父親に代わって実際にやってみたところ、鬼が不憫に思えて悲しくなってしまったためにそれ以降は豆まきもしなくなったそうだ。