禁煙日記 5日目〜6日目

 

5日目

 

ひさしぶりに恋人と会った。禁煙を始めたことを告げて「まだ5日目なんですけど」と付け加えると、「もう5日目なの!? すごい!」と言われた。そんなことを言う恋人は実は禁煙の先輩であり、服用している薬との兼ね合いで数ヶ月禁煙を続けている。恋人は、その薬の服用を続けるかぎりは禁煙をしつづけなければいけないわけであり、おそらくその服用は長く続くので、手術が終わればふたたび吸いはじめようと目論んでいるぼくなんかよりもずっと厳しい場所にいるわけだ。それにも関わらず、恋人が「煙草を吸いた〜い」と言っている姿を見たことがなかったので、特に困難なく禁煙できているのかと思っていた。しかし今回、禁煙の話題を出したところ、恋人も煙草を吸いたくなるときがあるということが分かった。それは「演者が喫煙している映画を観たあと」であった。やはり吸いたくなるものなのだ。フランス映画は良くないねという話をした。

 

そのような話を居酒屋でしていると、なにやら良いにおいがやってきた。となりの客がハイライト、愛しのハイライトを吸いはじめたのだ。ハイライトといえば『孤狼の血』であり、ぼくはそれを映画館で観てすぐにコンビニでハイライトを買った。それ以来、ハイライトは愛すべき銘柄のひとつである。そのハイライトのにおいが漂ってきてはもう降参するしかないわけであり、その客から1本譲ってもらうために財布から30円を取り出したわけだが、ちょうどその瞬間に恋人があらぬ方向に目をやりながら「禁煙できるなんてえらいなー」と唐突に言ったので、何やらすべてを見透かされているうえにたしなめられているような気がして結局は拳をぐっと握って堪えた。そんなわけで、5日目も禁煙成功である。ちなみに『孤狼の血』における松坂桃李の演技は実に素晴らしいので一見の価値がある。ぜひ。

 

 

6日目

 

恋人の家からぼくの通う大学までは徒歩でおよそ30分程度なのだが、その道を歩いていると沸々と怒りが湧いてきた。何にかというと、吸い殻のポイ捨てに、である。別に景観だとか環境の観点から怒るわけではない。禁煙中の人間の目に煙草を入れないでいただきたいのだ。箱はまだいい。しかし、吸い殻はよろしくない。今すぐ屈んで拾って咥えて吸いたくなってしまう。何故かよだれも出る。よだれといえば『謎の彼女X』だが、あれは名作中の名作であり、ぼくの人生の方向性を決めてしまった漫画でもあるのでぜひ読んでみてくださいな。